巨匠カン・ジェギュの驚くべき演出。鬼気迫る辰雄の演技
「本当に優しい監督だ、という印象ですね。これだけ怒らない監督も珍しいと思います」オダギリはカン監督をこう振り返る。作品を世に出すたびに韓国の映画史を塗り替えてきた程の巨匠だが、誰にでも礼を尽くし、そして柔軟な感性を併せ持つ。キャストとよく話し、良い意見は積極的に取り入れる。「台本を受け取ってから一年以上、一つの役という範囲を飛びこえ、多くの時間を共有できたと思います」と言う程に役に没頭したオダギリ。誰よりも、むしろ産みの親である監督よりも"長谷川辰雄"をよく知るオダギリの、役に対するアイデアは、本編の中には数多く盛り込まれている。 「日本の観客に嘘をつくわけにはいかないですし、商業映画であっても、こだわる部分はこだわらなければならないと思っていました」。 軍人でありマラソン選手でもあり、馬に乗り、ドイツ語のセリフも話さなければならない課題の多い役回りを演じたオダギリ。特にマラソンにおいては準備期間にランニングをはじめ、東京国際女子マラソン金メダリストの谷川真理元選手のもと、しっかりと体づくりとフォームの調整を行った。撮影中も、カンヌ映画祭参加中もランニングは欠かさなかったという。